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地球惑星物理学講座博士2年の山田智哉君の論文が国際誌Icarusに掲載されました

2016.3.30

地球惑星物理学講座博士2年の山田智哉君らによる論文が国際誌Icarusの電子版に掲載されました.論文はこちらです.


【研究成果のポイント】

  • 小惑星表層部の砂礫(レゴリス(注1))層の粉体対流効果による表面更新に関するモデル構築を世界で初めて行った
  • レゴリス対流による表面更新のタイムスケールは小惑星の寿命(注2)より十分短く実際の小惑星で起こり得ることを明らかにした

(注1)レゴリス
月・惑星・小惑星などの天体表面に分布する未固結の堆積物の総称.月や小惑星では,主に天体衝突の際に生じた破片が降り積もって形成されたと考えられている.
(注2)小惑星の寿命
ここでは小惑星そのものを粉砕・破壊してしまうような隕石衝突イベントが生じる頻度を寿命とした.

【研究成果の概要】

 小惑星の表面の砂礫(レゴリス)の物理的性質や運動の歴史を知ることは小惑星表層の進化史を解明する上で最も重要な研究テーマの一つである. 本研究では,小惑星表面のレゴリス層は天体衝突起源の振動によって流動化し、対流することにより更新される可能性があることをモデル計算により明らかにした. 今から10年ほど前,探査機『はやぶさ』の接近観測により水も大気も熱源も持たない小惑星イトカワにおいて,その表面を覆うレゴリスが動いた痕跡が観察された.一方で,地上実験によってレゴリスのような粉体に振動を加えると流動化により「粉体の対流」現象が誘起されることもこれまでの研究で明らかにされている.これらの知見を組み合わせると「隕石衝突起源の振動の繰り返しによってレゴリス層が流動化し対流する」ことが予想される.この小惑星表面での「レゴリス対流」仮説の現実性を評価するためには,レゴリス対流により表面を更新するために必要な時間(タイムスケール)を見積もり,それを小惑星の寿命等のタイムスケールと比較する必要がある.そこで本研究では,小惑星表面でのレゴリス対流効果による表面更新のタイムスケールを算出する数値的および半解析的モデルを世界に先駆けて開発した.図1に概要を示したモデルは以下の3つの過程により構成される:(i)小惑星への隕石衝突(図1の(1)衝突), (ii)衝突に伴う振動(地震)の発生(図1の(2)振動),(iii)振動によるレゴリス対流の発生(図1の(3)対流).本研究では,上記の3つの過程が繰り返されることによって小惑星の表面が更新されていくと考えた. モデルによる推定の結果,小惑星表面のレゴリス対流による表面更新にかかるタイムスケールは小惑星の寿命に比べて十分短いことが明らかになった.これは,レゴリス対流による表面更新過程が小惑星の表面進化を解釈する上で重要なプロセスとなり得ることを示唆している.

図1 隕石衝突の振動によって小惑星のレゴリス層に発生する対流現象の概念図

【論文情報】

Timescale of asteroid resurfacing by regolith convection resulting from the impact-induced global seismic shaking
T. M. Yamada, K. Ando, T. Morota, and and H. Katsuragi, Icarus, Vol. 272 (2016), 165-177.